隣のみずのくん

僕は中学1年生のころ、
家計を助けるために給食のパンを
よく家に持って帰っていました。

みんなが残して捨てられてしまうくらいなら
持って帰ったほうがパンも幸せだと思っていました。

だけど僕はパンよりご飯が好きです。
なので、持って帰ったパンはお母さんが食べていました。


当時、教室の僕の隣には
みずのくんという男の子が座っていました。

みずのくんはすごく大きいです。
中1の時点で既に185センチはありました。

僕が骨折したときは、
毎日一階まで迎えに来てくれて、
おぶって3階まで軽々と運んでくれるとても優しい子でした。

みずのくんは背は大きいのですか、気はとても小さいのです。
お母さんに怒られたくなくて、
定期テストを毎回くしゃくしゃにして机の奥に隠していました。

パンを家に持って帰らなくてはいけない。


僕は当時、限界を感じていました。
教科書を入れるとパンは頑張ってもせいぜい5個しか入りません。

給食では、パンとご飯は交互に出されていたのでパンは2日に1回しか出ません。

これではお母さんの食べるものがなくなってしまう。

思い詰めた僕は、
数学の授業中どうやったらもっとたくさんのパンを持って帰れるか考えました。

悩んでも答えはなかなか見つかりません。

行き詰まり、外の景色を見ようとし窓の方に目をやると
隣でみずのくんがとても良い姿勢で寝ていました。


目線を下げるとそこには机の横にシューズケースがかけてありました。

みずのくんは足も大きいのでシューズケースもみんなより大きいのです。

僕は自分が天才かと思いました。

授業が終わり
給食当番が配膳をしている間に
みずのくんにこっそり僕の作戦の話をすると

眠い目を擦りながら

イイヨ。
と、みずのくんはボソッといいました。

みずのくんが机の奥にテストを隠すように
僕は、みすのくんの大きなシューズケースの中に、
お母さんの大事なパンをこっそり隠しました。


バレる編
帰りの会のとき、バッグを背負おうとして、バランスを崩しこけてしまいました。
10コを超えるパンがバックからボトボトと落ちました。
とうとう、バレました。みずのくんも一緒に怒られました。
申し訳なかったです。

母が学校に呼ばれ、
僕は
家計を助けるためにやっていたこと
捨てられるパンがかわいそうだと思ったこと
を正直に話しました。

みずのくんのシューズケースの中に隠していたことを話したときの母の表情をいまだに忘れられません。先生も半分諦めたような顔をしていました。

僕は、持って帰ることに必死で
食べる人の気持ちを考えていませんでした。

1年生の終わりに
僕はお父さんの転勤で、転校しました。

みずのくんは卒業する頃には身長が2メートル近くまでなったそうです。

高校では世代別のバスケの日本代表にも選ばれたそうです。

シューズケースの秘密を共有した友人として
少し誇らしいです。

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